祖母の記憶



記憶の中に残っている祖母の笑顔。
その笑顔が、後にずっと家に飾ってあった遺影の記憶なのか、それとも私だけに向けられたものなのか。
曖昧でよくわからない。

 私がこの祖母にどれほど可愛がられたか、覚えていることは少ないけれど、断片的な記憶はある。
その記憶には、おしゃべりで無邪気な私が登場する。
本当に私だろうかと思うほど、お調子者の、目立ちたがり屋の。

そして、そういう私を見守り微笑む祖母の顔。


 初めて、遊園地のジェットコースターに乗った日。
家に帰り、真っ先に祖母の所に行き、夢中でその日の出来事を話している記憶。
何か特別なことがあった日は、こんなふうにして祖母に報告するのが私の習慣だったのだろうか。

話を合わせながら、驚いたり、感心したり、終始微笑んで聴いている祖母。
「今度、おばあちゃんも一緒に乗ろう。」
多分そのころもう、祖母は歩くことが出来なかったと思う。

 お風呂から出るといつも、タオルで髪を拭きながら祖母の布団の所に行く。
「綺麗になったね。いい子になったね。」
そう言って頭を撫でてもらう。
これも私の日課だったような気がする。 

 私の中にある、人を愛する力の多くは、この人から授けてもらったものなんじゃないかな。




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