5.生命尽くして/生と死のワークショップ  
  エリザベス・キューブラー・ロス著(産業図書)


 ターミナルケアの第一人者、エリザベス・キューブラー・ロスの自伝です。
この人の著書は「死ぬ瞬間 ---死とその過程について---」が、もっとも有名でしょう。
人が死を受け入れていく段階を

  第1段階 否認と孤立 
          「わたしのことじゃない。そんなはずはない。」
  
  第2段階 怒り   
      「どうして私なのか。どうしてあの人じゃないのか。」  

  第3段階 取引   
     「もう一度だけ○○できたら、もうそれ以上は望まない。」

  第4段階 抑鬱
          失ったもの、これから失うものが招く抑鬱

  第5段階 受容
        「放棄」ではなく「長い旅路の前の最後の休息」

の5つに分けて語った有名な著書です。
これは、極度に困難な状況に対処するために、人に備わっている防衛メカニズムです。
つまり死に限らず、受け入れがたい状況すべてに関して、この考え方は通用すると言うことです。
 さて、「生命尽くして」に話を戻します。
エリザベス・キューブラー・ロスもまた、精神科医として多くの末期患者と体当たりの医療を行ってきた人です。
ターミナルケアという概念がまったく無かった時代に、その大切さを説く彼女は、他の科の医師ばかりか、同じ精神科の仲間達からも長い間受け入れられることはありませんでした。まるで、末期患者の心をわざわざかき回す、悪趣味で迷惑な変わり者というように。その険しい道を、この女性が切り開いてきたパワー。そのおかげでどれほどの人々が、恐怖から逃れ、安らかな死を迎えることが出来たでしょう。
 そんな彼女は、「死を見つめる」仕事をしていくうちに、その作業がまさに「生を見つめる」ことでもあると気づきます。
この人の人生は、けっして平坦なものではなく、どちらかと言えばまず体当たりで行動して、転んでは立ち上がり挫折しては戦い・・・というような半生です。
この力強く賢い女性から、私は自分で自分の道を切り開く、と言うことを教わりました。
そして、この女性が苦しむ人により添う姿から、人を助けることの厳しさを知りました。