アダルト・チルドレンと機能不全家族
元アメリカ合衆国大統領、クリントン氏が、自分はアダルトチャイルドであるということをカミングアウトした頃から、この言葉は徐々に浸透してきました。
けれど、私自身がそうであったように、直訳すると「おとなこども」となるこの言葉の概念は、非常に誤解されやすいと思います。
「大人になりきれない子供っぽい大人」でも、自分の人生の失敗を、ことごとく親のせいにするための都合のいい言葉でもありません。
また、「ACは病気ではない」のです。
当初、、「アダルトチルドレン(AC)」とは「Adult Children of Alcoholic=“ACOA”」を意味していたようです。
アルコール依存症の親がいる家庭で育ち、成長して大人になった人ということです。
彼等が感じる生きにくさや、共通の行動・思考パターンが注目されるようになり、この言葉が生まれたのです。
その後「機能不全家族」の中で育った子供達も、同様の傾向にあることから、「アダルト・チルドレン・オブ・ディスファンクショナルファミリー
(Adult Children of Dysfanctional family="ACOD")」というさらに広がった概念が生まれました。
現在では、この「ACOD」を含めて、「AC」と呼ばれているようです。
それでは、機能不全家族とは何でしょう。
本の紹介でも少し触れていますが、子供が子供でいられない家庭、子供が子供として安心して育つことができない家庭です。
つまり、親が親として機能していないということです。
これもまた、非常に誤解を招きやすい表現なのですが、例を上げれば、夫婦の仲が悪い、家庭内に暴力が絶えないなど、緊張を強いられるような家庭、機能していない家族の状態です。ただし、ここで言うところの暴力とは、決して目に見える、形に表れる暴力のことだけではありません。
「優しい暴力」・・・情緒的な暴力をも含みます。
むしろ、情緒的な暴力ほど、傷跡が見えないだけに、深い傷を負っている事を本人が気づかないという危険をはらんでいるのではないかと私は考えます。
ごく普通の家庭で育った子供が何故・・・という、ぞっとするような事件も、丁寧に解きほぐしていけば、こんなところにたどり着くことも多いのではないか、とそんなふうに思います。
以下にACの定義をジャネット・G・ウォイテイツ氏、斎藤学氏の著書より引用しました。
ACの性格的特徴(ジャネット・G・ウォイテイツ)
- 何が普通か推測する
- 長期にわたる計画を最初から最後までやりとおすことが苦手である
- 本当の事を言ってもかまわないときにウソをつく
- 自分を厳しく責め立てる
- 何をしても心から楽しめない
- 何でも真面目にとりすぎる
- いい恋愛や結婚をすることが難しい
- 自分の思い通りにならない変化に対して過剰反応する
- たえず相手に気に入ってもらおう、ほめてもらおうとする
- 普通自分が他の人と違っていると感じる
- 極度に相手に忠実である。相手にそれだけの値打ちがないという証拠があっても
- 極端に責任感が強すぎるか、極端に無責任かのどちらかである
- 他にも何か方法がないだろうか、こうしたらどういう結果になるだろうか、など真剣に考えないまま行動を起こし、いったん行動を始めると、それにあくまでもこだわり、途中でやめることが出来ない。この衝動的な性格のせいで、混乱、自己嫌悪、収拾のつかない状態となり、その後片づけに大変なエネルギーを費やさなければならない

ACの定義(斉藤学)
- 周囲が期待しているように振る舞おうとする
- 何もしない完璧主義者である
- 尊大で誇大的な考え(や妄想)を抱いている
- 「ノー」が言えない
- しがみつきを愛情と混同する
- 被害妄想におちいりやすい
- 表情に乏しい
- 楽しめない、遊べない
- フリをする
- 環境の変化を嫌う
- 他人に承認されることを渇望し、さびしがる
- 自己処罰に嗜癖している
- 抑うつ的で無力感を訴える。その一方で心身症や嗜癖行動に走りやすい
- 離人感がともないやすい
これらの特徴を作り上げてきたものは、このようにしなければ生きてこられなかった機能不全の家庭での生活に起因しています。
感情を表に出さない、自己主張をしない、慢性的な不安や緊張、絶えず無意識に行われるマインドリーディング(特に他者の悪意)・・・など、人それぞれとは思いますがたくさんあると思います。
たまたま育った環境の中で、当然のごとく身につけてきたそれらの知恵と習慣が、皮肉にも大人になってからの生きにくさの原因になってしまった、とも言えるのではないでしょうか。
ACとは自分自身を見つめ直すひとつのきっかけとしての言葉です。
この言葉をたよりに、ここから自分の心の奥に分け入って、絡まった糸を根気よく解いて、本当の自分を見つけ出す。
少なくとも私にとっては、そういう「前進のためのキーワード」でした。
そして、ここを読んでくださる「誰か」にとっても、そうであればいいなと思っています。
以上、主に「なぜいつもあなたの恋愛はうまくいかないのか」/ジャネット・G・ウォイテイツ(学陽書房)、「アダルト・チルドレンと家族」/斎藤学(学陽書房)から一部引用させていただきました |
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